特集コラム

Column 4 中野グルメ

2011/04/26

中野大勝軒

ニッポンのどんなにさびれた街であっても、駅前にはうどん屋というものが必ずある。それは、室町の時代から受け継がれてきたうどんの食文化が、日本人のDNAに入り込んでいるからなのかもしれない。
話は少しずれてしまうが、近年メディアでも多く取り上げられている「つけ麺」の歴史を探っていくと、つけ麺のルーツがうどんにあったという事が判明した。

グルメ雑誌や情報番組をよく見る人であれば、つけ麺というキーワードで思い出してしまう人と店があるはずだ。
それは「元祖つけ麺」で有名な東池袋の大勝軒(たいしょうけん)の元店主、山岸一雄さんなのではないかと思う。山岸さんはすでに店長という立場からは退いてしまったが、今でも「つけ麺の神様」とまで呼ばれている程に尊敬を集めている人なのだ。

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つけ麺=大勝軒=東池袋の山岸さんという方程式が成立しているようにも見えるのだが、実は「元祖つけ麺の元祖」は東池袋ではなく、中野マルイの横にある中野の大勝軒から始まっていた事が分かった。

歴史を簡単に説明すると、昭和20年代後半に中野のラーメン屋を任されていた山岸さんが、自身の賄い飯として食べていた“湯飲みに注いだスープと醤油に麺をつけた食べ物”が、つけ麺になったのだというのだ。
きっかけこそ意外な秘話なのかもしれないが、多くの研究を積み上げて山岸さんは、中野の大勝軒で初めて“つけ麺”を商品化させてお客さんに提供を始めたのだ!
特に当時のラーメンは、スープに細麺が浸かっている中華そばスタイルが基本のはずであったのだが、中野大勝軒のつけ麺は、もっと日本人のDNAに合うような和風スープ+うどんの様な食感の研究成果だったのである。

その後に、山岸さんは東池袋にお店を出して有名になっていったのだが、中野の大勝軒は今でも和風スープ+うどんの食感というスタイルを貫いているのだ。
その証拠に、中野店の店内には青年時代の山岸さんが当時の仲間達と作った野球チームの写真なんかも飾られているのだ。

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現在の中野大勝軒の店長、坂口さんに話を聞いてみた。
「近所にもたくさんラーメン店はできてきましたね。うーん・・・ライバル店だという感覚は持ってないですよ。店ごとに魅力があるのがラーメンなのですから。
大勝軒には大勝軒の味を楽しみに来てくれるお客様がいるわけですからね。中野の大勝軒のつけ麺は、誰にでも、子どもからお年寄りまで食べてもらえるような伝統的な和風スタイルです。こんぶ、かつおぶし、野菜、鶏・・・そして醤油ベースで、うどんの様な食感。一人でも多くの人に愛される味・・・それこそが中野の大勝軒のスタイルですから。中野に多くあるラーメン店の一つとして刺激を与えられたら良いと思っていますよ!」

実は3月の大地震で中止になってしまったが、中野のつけ麺イベントにも積極的に参加をしていた坂口さん。そのコメントからは、中野にある全てのラーメン店が自身の店と一緒に発展していけたら良いという空気が感じられた。

今となっては中野や東池袋以外にも、横浜・新宿・大阪・沖縄など、全国各地でのれんを掲げる大勝軒であるが、大勝軒の魅力はチェーン店の様に全国どこでも同一の味を味わえ「ない」ことなのだと思う。

確かにお店の名前は同じなのかもしれないが、大勝軒は店によって味が違う事は素人であっても分かる程に違う事も事実。へりくつを言っているようにも聞こえるが、大勝軒のつけ麺を食べた事があると言い切れる人は全国各地の大勝軒を巡った人だけなのだと思う。 もしもあなたが、つけ麺発祥の地の中野大勝軒の味を知らないのであれば、一度その「のれん」をくぐり、元祖つけ麺の元祖を味わってみるのはどうだろう。

中野大勝軒
http://www.taishoken.net/
住所:東京都中野区中野3-33-13
TEL:03-3384-9234

文・取材 / 矢嶌船峰

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